2015年6月1日

小嶋先生 Science #6221, #6224, #6237
 #6221では、観察対称そのものを拡大して解像度を上げるExpansion microscopyの話が面白かったです。方法としては、ポリアクリルアミドを組織に入れ、透析によりポリアクリルアミドを膨張させる、というものです。ゲルに結合した二次抗体が元の位置を反映しており、70Åの分解能や立体像まで見ることが出来たそうです。発想の勝利とはまさにこのことだと思いました。

 #6224では、bacteriaから哺乳類まで広く保存されている膜タンパク質TSPOの結晶構造解析の話が特に印象に残りました。バチルスで精製されたTSPOは可溶化するとmonomer, dimer, oligomerの3つのピークが検出され、dimerは濃度によってピークの出る位置が変化していました。LCP法で複合体としても結晶化しており、自分の実験のヒントになりそうな内容でした。

 また、#6237からは、普通に機能していても、実は細胞群として癌になりやすい細胞群が組織内に沢山存在することを示唆した話を紹介されていました。NOTCHなどの変異は細胞分裂する際にpositive selectionにより残されたまま次世代へ伝搬していました。#6224で紹介されていた2通りのチミンダイマー変異産生経路の話もあり、これから夏を控えているので紫外線対策はしっかりしようと思いました。

稲葉さん PNAS No. 11, 17
 No. 11からは、サルモネラ菌がquorum sensingにより産生するanti cancer proteinの発現をGFPの発現を見て解析していた話が興味深かったです。QS依存的なGFPの発現系を用いた実験により、腫瘍組織で、菌の密度が高いときや菌同士が近位にあるときに、anti canser proteinが発現することが分かりました。菌の密度と菌同士の距離のどちらが重要なのかはまだ分かっていないそうなので、今後どのようなモデルになるのか楽しみです。Anti cancer proteinについても初めて知ったので、勉強してみようと思います。

 No. 17では、FtsZの伸長を阻害するMciZの構造と機能解析の話が身近で印象的でした。MciZがFtsZのC末に結合することで、フィラメントの−端への伸長を阻害することを、結晶構造解析や蛍光物質の解析により示していました。MicZが作用してできる100 nm程度のフィラメントではZリングは形成されないようなので、最低何nmの長さがあればリングが形成できるのかが少し気になりました。

 ファージの細胞破壊メカニズムの話も面白かったです。内膜からペプチドグリカン、外膜まで伸びるスパニンを構成するドメインを別々に発現させ、スフェロプラストの外で形成されたスパニンが収縮し細胞が融合する様子を、異なる蛍光物質を用いて観察するという実験が目に見えて分かりやすかったです。ペプチドグリカン層を破壊した後、スパニンが収縮し、外膜を物理的に破壊することで宿主細胞の破壊が行われるという話でした。収縮時にどの程度のエネルギーが外膜にかかっているのか、外膜の強度などに興味が湧くお話でした。

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