2015年6月8日

竹川さん Science Vol.348 #6234, #6235
1) ゴミムシがお尻から毒ガスを噴射する際のメカニズムについての論文。ハイドロキノンと過酸化水素を別々に溜めておいて、噴射するときに反応させているらしいが、そのとき起きている振動に注目した。放射光施設で実際にゴミムシのおなかに放射線を当てて構造を観察し、反応と同時に起きる爆発の反動によってお尻が閉じることがわかった。(「HUNTER×HUNTER」がゴミムシの解説をするような漫画だとは知りませんでした。)
2) 黄色ブドウ球菌の細胞分裂についての論文。黄色ブドウ球菌は、くびれによってではなく分裂板ができた後にくす玉のように割れることによって分裂をするらしいが、その様子をビデオカメラで撮影することで割れるのに必要な時間を測定した。すると、カメラの分解能と同程度の1~2ミリ秒しかかからないことがわかった。また、その分裂は細胞の膨圧をエネルギーとしていることが示唆された。割れ方があまりにきれいなので驚いた。
3) CRISPRシステムのCmr1~6複合体の構造についての論文。TypeIIIのシステムが存在する高熱菌由来のCmr複合体を、高熱菌内で発現して精製しcryoEMによる単粒子解析を行った。RNAを入れたものとそうでないものをそれぞれ解析し、5塩基対ごとにCmr4のループ部分がRNAに刺さったような構造をとっていることがわかった。
4) はしかウイルスのキャプシド構造についての論文。ウイルスを昆虫に感染させ、CsCl密度勾配遠心によって精製したキャプシドを、cryoEMによって単粒子解析した。4.3Åの分解能が得られ、遺伝物質であるRNAを巻き込みながららせん状に積み上がった構造をとっていることがわかった。ウイルスではこういった構造がよく見られるのだなと思った。
5) 光駆動性カリウムチャネルをつくったという論文。青色光を当てると構造が変化する植物由来の光センサータンパク質をチャネル構造のあちこちにつないで、青色光を当てたときのみチャネルが開くようなものをスクリーニングしたところ、チャネルのN末端につなぐとよいことがわかった。さらに、センサータンパク質に脂質結合能を与えることで膜状での安定性を向上させたり、リンカー部分を短くしたりして、より光応答性のよいチャネルにした。カリウムということで、神経研究に大いに役立つことが期待されるらしい。

郷原さん Nature Vol.521 #7550, #7551
3) ハナバチと殺虫剤に関する論文。ハナバチは、ネオニコチノイド系殺虫剤によって致死量以下でもダメージを受けるそうだが、ネオニコチノイドが入ったえさでも感知できず忌避できないらしい。同じハチでもミツバチは感知できるそうで、ミツバチは気の毒。
5) X染色体で起きるサイレンシングについての論文。3つのタンパク質がサイレンシングに必要であること、また特にSHARPというタンパク質が非コード長鎖RNAであるXistと直接作用することでRNAポリメラーゼが染色体から外れて転写が阻害されることが示唆された。
6)7) F型ATP合成酵素のαヘリックスヘアピン構造や出芽酵母由来のV型ATPaseの回転状態をcryoEMで解析した話。V型ATPaseについては、プロトンを10個輸送するごとにATPが3分子できるということもわかったらしい。

平子先生 PNAS Vol.112 #6, #7
1803) 生物学的封じ込めの新たな手法についての論文。封じ込めには栄養要求性にするという手法が多用されるが、コストが高いなどの問題がある。今回考案された手法は、生育上不可欠であるヒストンが、エストロゲン存在下でのみ核へ移行できるというもので、エストロゲン結合能をもつEBDタンパク質が、エストロゲンがないときヒストンを細胞質にとどめることを利用している。nMという低濃度のエストロゲンで誘導をかけられるので、コストを抑えられる。巧妙なシステムだなと思った。
1743) イモガイの毒に関する論文。イモガイという貝は毒液の中に魚類由来のものと相同性の高いインスリンを含んでいるらしく、人工的に高血糖状態にした魚にイモガイのインスリンを投与すると、確かに血糖値が下がることがわかった。この結果から、イモガイは獲物にインスリンをかけて低血糖にし、動きを鈍らせることで捕らえやすくしていると予想していた。
2011) 膜タンパク質であるBamAとBamDの相互作用が細菌の生育には重要なので、BamAの断片を発現することで両者の作用を妨げ、生育を阻害することができる。抗生物質への応用に生かすことができると述べていた。
757) 根粒細菌において新しいつながり方をしたセルロースが見つかったという話。セルロースはβ1,3またはβ1,4シンターゼによって合成されると考えられており、この細菌はどちらも有していないためセルロースを合成することはできないとされていた。しかし、セルロースがあることがわかり、別のシンターゼの存在が示唆された。

BACK