小嶋先生(Nature #7532, #7542, #7552)
1 Suga et al.
 光化学系IIの話。反応中心であるMnCaクラスターについて、Mn-Mn間の距離などが、X線結晶構造中での距離と他の実験から予想される距離との間で違いがあることから、筆者らは結晶構造ではX線によりダメージを受けることで違いが生じてしまっているのではと考え、SACLAを用いたフェムト秒のX線照射によりダメージが少ない条件で構造解析を行ない、これまでの結晶構造とは異なるMnCaクラスター内の分子間距離が観察され、特にその中のO5の位置が異なることに着目して、O5はOH-の形で入っていて、これがH2OをO2に変える反応のために重要とのことでした。相変わらず、光化学系IIの話はこういう細かい話やシミュレーションの話が絡んでくるので難しいです。

2 Efremov et al., Zalk et al., Yan et al.
 Ryanodine receptorの構造について3本立て。Ryanodine receptorは骨格筋のCa2+放出において重要で、その構造を電子顕微鏡single particle analysisで、それぞれ6.1A, 4.8A, 3.8Aで構造決定したという話。特に重要なのがEfremov et al.の仕事で、Ca2+有無での構造を決めて、open状態とclose状態の構造を比較していた。バクテリアの電位依存性channelとの構造的な相同性も明らかになった。

3 Li et al.
 バクテリアが持つ膜貫通型のステロールreductaseのX線結晶構造解析(2.7A)の話。(配列的にはmammalのとも似ている)。結合したNADPHが一部見えていなかったり、結合した基質らしきものが何なのかは特定できないようだったが、他のsteroid reductaseの構造と比較して、反応に重要なアミノ酸残基に変異導入して活性を測定したり、ステロールの結合やNADPHを補完した絵を出していた。新しい話なのだろうけど面白さは感じられなかった。

4 Kakugawa et al.
 Wntの抑制因子Notumの話。使っているのはショウジョウバエ。Notumはphospholipase活性を持つタンパク質だが、その活性とWntの抑制機能の関係性はよく分かっていなかった。そこでNotumの結晶構造解析したところ、既知のesteraseタンパク質と構造的に似ていることが分かった。phospholipase活性はWntの抑制には関係なかった。実際にesterase活性を持つことも調べ、Notumによって認識されやすいpalmitoleic acidの長さなども調べていた。駄目押しで、esterase活性がなくなる変異体(S232A)を用いて、palmitoleic acidが結合した状態での構造も明らかにした。綺麗な仕事だと思った。平子さんも質問していたが、Wntに対する特異性はどのように決定しているのかは気になった。

6 Wang et al.
 ドーパミンレセプターの構造の話。創薬のターゲットとして注目されるドーパミンレセプターだが、これまでは結晶化しやすい変異を導入した非機能的なものの構造しか分かっていなかったが、今回はその変異を減らして機能的なものの構造を明らかにした。今回の話よりその前回の結晶化しやすい変異を導入した話のほうに興味を覚えた。

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