山口さん PNAS Vol.112 #34, #36
2) サルモネラ菌の接合におけるプラスミドの伝播の制御に関わる、RicIの発現にsmall RNAによる転写後の活性化が必要であるという話。small RNAであるRprAはRicIをコードするmRNAと結合し、その構造変化を起こすとともに、σ因子を活性化することでRicIの発現を誘導するそうで、small RNAがDNAの転写後の活性化を担うという点が新しいらしい。生体内での制御にはいろいろなパターンがあることを再認識した。
3) 腸炎ビブリオ菌がプラスミド内にコードしている毒素の結晶構造解析。PirAとPirBからなるヘテロ二量体で、バチルス菌がもつCryという毒素と構造が似ていることから、バチルスからのプラスミドの水平伝播を示唆していた。アミノ酸配列の相同性が低く、またビブリオでは二量体であるのに全体の構造としては似ているというのは面白いと思った。
4) シュードモナス菌におけるc-di-GMPの分解経路ではたらく酵素を同定したという話。c-di-GMPの分解で一部生じるpGpGという核酸をGMPにする過程を担っており、大腸菌において生育に重要である酵素がシュードモナス菌でも同様に重要であることがわかった。

西野さん Nature Vol.523 #7560, Vol.525 #7568
1) 外膜タンパク質のターンオーバーについての話。ビタミン輸送体などの外膜タンパク質について、タイミングをずらして異なる蛍光で標識することで細胞内の古いタンパク質と新しいタンパク質を区別できるように可視化し、その局在の変化を観察していた。古い外膜タンパク質は細胞分裂の過程で古い極に引き寄せられることがわかった。外膜タンパク質のターンオーバーに記憶がはたらいていることに驚いた。古い、新しいの違いはどのようなことなのだろうか。
2) 大腸菌の細胞の大きさの時間変化を、一つの細胞の分裂を追うことで観察した話。分裂前後の細胞の大きさには相関があり、大きい細胞ほど早く次の分裂を起こして小さくなろうとするらしい。時間の経過とともにある大きさに収束することを、シミュレーションで再現していた。
5) RNAポリメラーゼによるDNAの転写をリアルタイムで観察した話。一端をビーズに固定したDNA上を同じくビーズに固定したRNAポリメラーゼが走るようにし、ビーズ間の距離を測定することで転写開始時のRNAポリメラーゼが決まった距離を動くことを示しているようだったが、よく理解できなかった。

本間先生 Science Vol.349 #6248, 6250, 6253
1) 藻類が持つロドプシンを改変してアニオン特異的なチャネルを作り出したという話。神経系の研究などに応用が期待できるとのこと。
2) 膜電位が細胞膜の脂質のダイナミクスに影響するという話。膜電位差が小さくなると、細胞膜中で特定の脂質が集合することによってより多くのRasタンパク質が集まり、過剰なMAPキナーゼ系のシグナル伝達がはたらくことで組織のがん化を引き起こされるらしい。膜電位の重要性を感じた。
4) 酵母由来のスプライソソームの構造解析。スプライソソームは初期のmRNAからイントロンを除去する役割を果たす複合体だが、3MDaにも及ぶ巨大タンパク質である。何ステップもある反応中の一部の構造を、cryoEMによる単粒子解析で明らかにした。使用した電顕がFEI社製ということでしたが、生物物理学会のランチョンセミナーでシェアが高いという話を聞いたので、納得だった。

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