2) #6241_Avinoam et al; クラスリンでコートされた膜が発芽する際、小さな領域でも発芽を開始できるのか、それとも大きな領域をコートしないと発芽しないのかを検討していた。結果は大きな領域をクラスリンがコートして初めて発芽するモデルを支持していたが、1~2秒以内に半分が入れ替わるような、クラスリンの入れ替わりがなければならない。以前、in vitroで発芽を再構成し観察した仕事を拝見したことがあり、その時どのくらいかかっていたかは正確には覚えていないが、十分にあり得るように思った。
3) #6254_Zanet et al; Drosophilaの胚発生に関与するタンパク質Svbのプロセッシングの仕組みの迫ろうとした話。Svbが転写因子として活性化するには、N末端側の領域が切り取られなければならない。その時、Priという因子が関与し、ユビキチンE3 ligaseのUBR3を介してSvbがユビキチン化されてプロテアソームへ送られる。不思議なのは、全長ではなく、N末端の部分のみが分解されることで、その仕組みは説明されていないようだ。
北山さん PNAS vol.112 no. 48 and 49
1) #48_Rubin et al; シアノバクテリアにおいて生存に必須な遺伝子を網羅的に調べた話。光合成生物では初めての報告だそうで、約3分の2が必須ではなく、4分の1が必須遺伝子だった。地味だが大切な情報となる大きな仕事と思った。
2) #49_Tagua et al; 光に応答するカビを使って、光があたるとDNAを修復するphotolyaseからcryptochromeへの進化を議論していた。あるカビには、光修復酵素がなく、中間に当たるとされるDASHというタンパク質しかない。その遺伝子をクローン化し、タンパク質を大腸菌で発現させて、光を当てた際のDNA修復能を再構成することができた。DASHがphotolyase活性を持ち、植物のcryptochromeに近いことを見出していた。
3) #49_Horvath et al, Kim et al, Price et al; 根粒菌が植物に感染したあと、どのようにして植物内で生き延び、共生を実現して窒素固定を行うのか、その一端を明らかにした話。植物側が作るペプチド(NCR)は600種類以上もあるそうだが、今回たった1つのペプチドの産生が失われると、根瘤を作れなくなることがわかった。また、共生相手の選択も重要で、相手が異なる場合は菌側からメタロプロテアーゼを分泌し、植物の生育をおくらせてしまうようだ。この戦略が菌側にとって有利ということなのだろうが、自分では思いつかない。自然は生き残る策を複数用意してくれるのだろう。
稲葉さん Science #6255, 6263
1) #6263_Hayashi et al; 哺乳類におけるレム睡眠とノンレム睡眠の切り替えがどのように起こっているのかを、マウスのモデルを使って調べた話。生後10.5日の胚では、神経細胞にラベルを入れやすくなるらしく、局所的に神経細胞の興奮を追うことができた。ノンレム睡眠に入るときに活性化する神経細胞を初めて見出した。私は眠りが浅くて困っているのですが、この切り替えが適切に働いていないのかもしれないです。
2) #6263_Hanna et al; 白血球の中でも、パトロールするものがないと肺がんが進行しやすいということを明らかにした話。そういえば、昨日私の健康診断の結果が出て、白血球値は正常だったので安心しました。
3) #6263_Blackwell et al; ボリビアのある地域の女性は、小腸に回虫が感染していることが多い。この感染と妊振率の高さに関係があると主張している。初産の年齢が若く、また次の子を妊娠するまでの期間が短くなるのだそうだ。それにしても子沢山で、10名も生むらしい。ただ、回虫に感染することがなぜ妊娠率上昇に関係するのかわからなかった。
4) #6255_Shiota et al; 我々の学科の卒業生の塩田さんが、学生時代から続けている光架橋実験をポスドク先(オーストラリア)でも続けて、まとめあげた仕事です。ミトコンドリアの外からミトコンドリア内へ取り込まれるタンパク質は、外膜上のTom complexを通るが、そのTom40における透過部位と、基質が透過後にシャペロンへ受け渡されるしくみがわかったということでした。ものすごい量の変異体を解析しているので、大変だったと思います。