尾上さん Nature Vol.519 #7543,7544, Vol.522 #7557, Vol.523 #7559
1) 酵母を使った倍数体の進化の研究。ゲノムコピー数 (ploidy) が多い程(1倍体、2倍体より4倍体)、世代を経る中で変異が生じやすく、またploidyの変化も顕著だということがわかり、ploidyが進化に影響するということを示唆していた。異なる蛍光タンパク質を発現する二種類の酵母を1:1で混ぜて培養し、世代を経る中でのその量比の変化を見る、という実験手法が単純明快だった。

2) 古細菌のtubulinホモログである、CetZについての研究。細菌のtubulinホモログであるFtsZは細胞分裂を制御しているが、CetZは細胞分裂には影響せず、細胞の形状や運動能に関与していることが示唆された。形状と運動能にも関係があるのだろうか。

3) プログラム的に決まっているのか、確率的に決まるのか、という観点で、細胞周期について調べた研究。Fucciマーカーで細胞周期を可視化し、その長さを測定した結果、親細胞と娘細胞の周期には相関がないが、娘細胞どうし、いとこ細胞どうしでは相関があることがわかり、プログラム的に周期を制御する因子の存在が示唆された。

竹川さん PNAS Vol.113 #2,3
1) ホニュウ類がもつTRPチャネルのシミュレーションによる解析。TRPチャネルは痛みや辛みや温度などさまざまな刺激に応答するチャネルで、リガンドもたくさんあるそうだが、カプサイシンとレシニフェラトキシンについてその結合応答をTRPV1のクライオ電顕での構造解析結果をもとにシミュレーションしたという話。

3) ビブリオ属細菌のβラクタム系抗生物質耐性に関与するタンパク質を同定したという話。コレラ菌で耐性をもたなかった変異体を解析すると、内膜に存在するヒスチジンキナーゼ (WigK) とそのレスポンスレギュレーター (WigR) に変異が入っていることがわかった。抗生物質そのものか外膜ストレスに応答してWigKがWigRをリン酸化し、転写因子としてはたらくと予想していた。V. alginolyticusではどうなのだろう。薬剤の話だから就活にいいぞと本間先生が仰っていました。

5) 結核菌特異的なType7輸送システムについての研究。輸送体ESX1~5のうち、ESX3が鉄の取り込みに重要であることがわかり、またEsxG, EsxH, PE-PPEといったエフェクタータンパク質が、それぞれ鉄の取り込みと感染のどちらに必要なのかを判別できたとのこと。自分のコロキウムで取り上げたのに、シデロフォアという名前を思い出せなかったのが残念です。

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