三野さん発表
Natureから3報の紹介論文で、どれも、クライオ電子顕微鏡をもちいた構造解析で、病原体が対象でした。日本からもエボラウイルスの構造でNatureに載っていましたので、病原体とクライオ電顕がNatureのトレンディーなのでしょう。熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のヒト赤血球への侵入に不可欠な段階に関与するRh5–CyRPA–Ripr複合体と赤血球が持つ受容体ベイシジン(basigin)との結合を明らかにしたものと、ウイルス侵入時にそのエンベロープと標的細胞の膜を融合させる役割に重要な、HIV-1のエンベロープ糖タンパク質(Env)に対する主受容体のCD4とそれに共受容体(ケモカイン受容体CCR5など)の1つと結合していた構造をクライオ(極低温)電子顕微鏡構造により解析した。HIV-1の宿主細胞への侵入方法について解明を進め、ワクチンや治療薬を開発する際の手引きとなるだろうと主張している。そして、3つめが、RNAウイルスの一種であるネコカリシウイルスの感染機構について、入口に似た集合体が、カリシウイルスゲノムをエンドソーム膜を通過させて宿主細胞の細胞質へと運ぶチャネルとして働き、それによって感染が開始されるという機構を、クライオ電顕解析から提案している。

寺島さん発表
Scienceでも、まずはクライオ電顕の仕事が紹介されました。分泌タンパク質が翻訳後に、小胞体膜を越えて移動することを仲介する酵母由来のSec複合体の低温電子顕微鏡構造を決定した。 著者のEunyong Parkさんは、速報のときに話にでたように、Tom Rapoportさんのところで仕事をしていてUC Berkeleyで2017年末から独立したようです。ゴードンに行ったときには立ち寄ってもいいかもしれません。もう一つ、気になった論文は、bacterial phase variationの論文です。私が学生のころに、サルモネラ菌のべん毛相変異機構があきらかにされ、DNAの逆位によっておこることが分かりました。今回は、このような逆位による制御によって細菌が、抗生物質暴露を含む突然の環境ストレスに対する装備と用意するということらしいです。話を聞いても、可逆的プロモーターに適した細菌ゲノムを調査するためのアルゴリズムについて理解できなかったので、この研究が正しいのかは?という気分で聞きました。

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