今日は2018年度最後の速報で、最後にふさわしく4名による発表で締めくくりました。修論発表会後すぐの発表準備、お疲れ様でした。それぞれ印象に残った発表内容を紹介します。

平野くん:PNAS Vol. 115, #49 and Vol. 116, #1から
微生物の感染に関する話題が3報でした。その中で、最初に紹介されたメスの方がオスに比べて病原体やワクチンへの応答能が高い、という話が興味深かったです。マウスを使った実験から、Toll like receptor 7の発現がメスで高く、遺伝子をコードする領域の5'側上流域のメチル化の度合いが異なることが原因のようでした。なぜメチル化が低下しているのかはこれから明らかになるのでしょう。

岩月くん:Nature #7741から
イントロンの話題が2つと、私の知り合いの論文の3つが紹介されました。イントロンはタンパク質をコードせず、mRNAの成熟により切り出されてしまうため、これまで生理的に意義があるとは思われていませんでした。しかし、今回intron配列を欠失した酵母の生育がstationary phaseで下がっていることがわかり、2つのグループから切り出されたイントロンが分解されないと問題が生じることが示されました。つまり、イントロンも生命現象の制御に関わっていると考えることができるとの主張です。また、ドイツの私の知り合いのBangeさんのところからは、カビが植物に感染する際に分泌される因子が、キウイに含まれるアレルゲン(kiwellin)によって相互作用されると、感染が抑えられることが結晶構造解析を通じて明らかになりました。

伊村さん:Science #6426, 6427から
薬剤の効果についての話題が3つ紹介されました。結核菌の脂質合成に関与するPptHの話は不思議で興味深かったです。2つめの紹介では、薬剤が我々の体内に取り込まれる際に、腸内細菌がその7割近くを担うということで驚きました。その取り込まれ方を、シミュレーションするという壮大な実験からは、本当に実用化される時期がそのうち来るのかもしれないという印象を受けました。3つめの紹介はかなりインパクトがあり、インシュリンをカプセルで体内に注入する方法を開発した話題で、発想の面白さが興味を引きました。ただ、みなさんも言ってましたが、カプセルが目的の臓器に届いて注入される際には、結局表皮に穴を開けなければならないので、それがどのくらい損傷を及ぼすのかが心配になりました。

本間先生:PNAS Vol. 116, #2, 3, 5から
8報の紹介がありました。アーキアのプロテアソームの構造、タンパク質集積構造のモデル構築、歯の発生機構など多彩な内容でした。その中で、SLCファミリータンパク質の結晶構造をprodrugとの結合型で解いた話は興味深かったです。基質に何か別のものを融合させた場合でも、トランスポーターは輸送できてしまうことが驚きでした。外側と内側にそれぞれ開いた構造をとるような構造変化を繰り返すことが輸送機構の根本であるならば、確かに輸送できてしまうのは理解できます。また、Gottesman labからは、大腸菌においてsmall RNAがTCAサイクルの酵素の発現を制御していることを見出していました。もうTCAサイクルはすべて分かっているような気になっていましたが、制御の観点からは分かっていないことがあったことに驚きました。

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