今日は分3のM1の皆さんが初めて速報で発表しました。3人とも、自分なりに説明しようと準備を頑張ったことが良くわかる発表でした。速報会で論文を読む訓練をすれば、どのような視点で論文を読んで行けば良いかがわかってくると思います。どんな新しい研究成果が得られたのか、その結果どんなことが言えるようになったのか、ということが聞き手に伝わる発表を目指して行きましょう。

伊藤さん PNAS Vol. 117 #14, 20
2冊から3報の紹介がありました。伊藤さんの研究テーマとも関わりの深い、脂質二重膜における脂質分子のダイナミクスを制御し、計測したSchuhmacher et al (#14, Biochemistry)の内容が興味深かったです。ジアシルグリセロール(DAG)のflipを光で制御し、細胞内に配向したDAGに作用する因子の核への移行・核からの排出をモニタし、それぞれの反応速度定数を得ていました。caged lipidをうまく利用し、光照射により反応を誘起させる手法は、他にも有効に使えそうです。個人的には、脂質の輸送や代謝をkmetという速度定数で示していたのですが、これがどのようにして求められたのかに関心があります。

山﨑さん PNAS Vol. 117 #18, 27
2冊から3報の紹介がありました。どれも面白い内容でしたが、その中でも2つ目に紹介された、タンパク質とRNAの複合体からなる中空のベシクル様構造の研究(Alshareedah et al, #27, Biophysics and computational biology)が初めて聞く内容で興味深かったです。脂質ではなく、RNAとタンパク質からなる中空の球状構造ができることそのものが不思議ですが、大きさも30 umくらいで揃っていて、しかも脂質でできたベシクルのように、ベシクル同士の融合すらできるようです。今回は正電荷を持つアルギニンが豊富なプロタミン(PRM)を使っていて、静電相互作用がこの構造の形成にどうやら関係しているようですが、詳細はわからないようです。

和泉さん PNAS Vol. 117 #17, 26
2冊から3報の紹介がありました。それぞれ異なる分野から選んでくれて良かったです。その中で、ゼブラフィッシュを用いてテロメアの長さとがんの関係を調べた研究 (Lex et al, #26, Cell Biology)が興味深かったです。テロメラーゼ(逆転写酵素)がないとテロメアは短くなりますが、ゼブラフィッシュではテロメラーゼをなくすとがんを持たない個体の数が減っているようです(つまりがん化しやすい)。炎症を示すTNFの発現量が上がっているので、この現象にはどうやら炎症が絡んでいるようでした。

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