今日で2021年度春学期の速報は終了です。最後を締めくくるのは滝口さんと別所さんでした。

滝口さん:Nature #7863, 7864, 7865, 7866
6報の紹介がありました。その中で印象に残ったものを挙げます。

#7863, Huang et al: guanylate-binding protein-like GTPaseが、植物細胞の中で液液相分離を行うことでストレス応答に対する転写制御を行うという内容です。クロマチン構造を形成する際に関与するGBPL3が液滴の中に入るとGBPL1を結合できなくなり、発現が誘導されるようです。ついに液液相分離の現象が植物からも報告されるようになってきました。嬉しいのは、私どもの研究室の卒業生のZhuさんが電顕トモグラフィー解析の部分を担当していて、authorに入っていることでした。あとでお祝いのお言葉を送ろうと思います。

#7864, Morita et al: 理研の研究成果です。毛の幹細胞の分化の仕組みを、ひとつひとつの細胞系譜を画像解析で追いながら明らかにするというかなり大掛かりな研究です。私も現在発生生物学を教えており、分泌シグナルがどのように細胞の運命を決めるのか、興味を持っています。ここではシンプルにシグナル分子の濃度が発生源の幹細胞からどのくらい遠いかによって決まり、その濃度差が最終的な運命決定に関与しているようです。

別所さん:PNAS vol. 118, #26, 27
2報の紹介がありました。

#26, Li et al: 血流に泡が入るとどのようなことが起きるのか、in vitroでマイクロ流路をもちいて調べています。どうやら血流中の泡によって血栓のような血流の”せき止め”の場所が形成されてしまい、それが問題を引き起こしているようです。マイクロ流路内に人工的に急な角度変化を形成させて血流を観察すると、ある角度で血小板などが蓄積することが見えてきました。どのくらいの圧をかけるとそれが解消するのかなども観察しているようで、生体内の実態にと比較するのはまだ先でしょうけれど、有用な情報が得られそうです。

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