2021年最後の速報はM2の伊藤さんと梶野くんの担当でした。

伊藤さん Nature 7882, 7888
2冊から3報の紹介です。
#7882, Liu et al:
ネズミを使って、ハリ治療で後ろ足にあるツボを刺激する時に関与する神経経路と、関与するタンパク質の話でした。 私も足のマッサージが好きで、コロナ前はよく通っていましたが、最近は自宅で自分で触っています。同じ経路が関与するのかわかりませんがacupoint ST36と名のついたツボに繋がる神経と、接続しているneuronでProkr2が受容体としてcytokineを受容しているようです。炎症をおさえるはたらきに関係するようで、東洋医学の知られざるメカニズムがだんだん明らかになってきたのが面白かったです。

#7888, Srinivas et al:
中絶により得たヒトの初期胚の細胞1つ1つについて、トランスクリプトーム解析を行ったという珍しい研究例の報告でした。春学期に発生学を教えていたので、卵割後原腸貫入が起こるときに、ヒトではどんな遺伝子が発現しているのかが明らかになるのは非常に興味深いです。

梶野さん PNAS vol. 118, no. 16
1冊から3報の報告、速報会での発表は最後なのでこれまでに読んだことのない分野に挑戦したとのこと。とても良いと思います。
Endo et al:
インフルエンザの感染がどのように広がるかを、日本の松本市の29の小学校で調査した結果と、それをもとに数理モデルでメカニズムを議論していましたした。事実は、クラスの数が増えても、別クラスからの感染が引き起こること(同じ学年からもらうケースが増える)から、クラスを分割したり、時差登校しても結局感染者数は変わらないようです。学生自体の自然な行動はコントロールできないことが原因の一つにあるようです。イギリスのグループが中心となって展開された研究でした。

Letelier et al:
脊椎動物の進化において、魚のヒレと手の形成がどこまで似ているのかが問いでした。魚ではSonic Hedgehog signaling経路に関与する転写因子Gli3が前後軸を決めるのではなく、むしろ細胞分裂を制御していることがわかってきたようです。かつて、黒岩研で行われていた研究内容を思い出しました。

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