菊本さん Nature
#7908_Hsiao et al:
ゼブラフィッシュの表皮細胞は、表皮を素早く作るためにDNA合成が未完全なまま細胞分裂を繰り返すというのは衝撃的だった。紹介した論文では、ゼブラフィッシュの前身の細胞をマークしてその細胞系譜を負いながらDNAの量を定量するという手法を用いていて、本当に細胞が分裂するときにDNA合成が間に合わずにDNAの量が低いまま分裂していることが示されていた。そして、そのDNA量の現象は、生息密度とも関係があるとのことで、生息密度が高ければ高いほど表皮細胞が増えることが示されていた。そのことに関しては競争がおこり早く成長しなければならないからと説明していたが、一つの大きい細胞をたくさん作るよりも細胞数を増やして表面積を増やすのは、物理的な衝撃に対してより丈夫で柔軟性のある防壁を作るためとも考えられるので、他個体との接触などの機械的な刺激が細胞子孫数にどう影響するかも気になった。

平子先生 Science
#6580_Batut et al:
ゲノム上で遺伝子から遠くの位置にあるエンハンサーがその遺伝子の発現を制御するということは知られていて、エンハンサーと遺伝子の間にはテザリングエレメントと呼ばれる配列があり、その配列はDNAに高次構造を取らせ、遺伝子とエンハンサーを物理的に近づける働きがあると知られている。テザリングエレメントはバウンダリーというDNA同士を接着させる働きを持つタンパク質とともに働いているかどうかは明らかになっておらず、議論されていた。紹介した論文ではMicro-C法という手法を用いて、ゲノムをヌクレオソーム単位で切断し、その後に切断された断片同士を結合させ、どのような場所で何がその結合を担っているのかということを解析した。結果的に、バウンダリーとテザリングエレメントは違う場所で検出され、それぞれ独立で働いているということが示唆された。

#6594_Schmidt et al:
我々人間の腸には多くの細菌がすんでいるが、体調の悪いときや病気の時にそれらの菌がどのように反応するかはよく知られていない、今回は紹介した論文ではCas1というRNAにくっつくタンパクを発現させた大腸菌をマウスの腸に住ませ、糞からそれを採取し、Cas1を介すことで大腸菌がどのような遺伝子を発現しているかということを解析した。通常の健康なマウスと、薬を与えて無理やり炎症を起こしたマウスに対して先に述べた解析を行ったところ、大腸菌の遺伝子の発現パターンに違いが見られた。この遺伝子発現の違いは今後医療でも使えるかもしれないと紹介されていた。炎症の薬が直接大腸菌に影響を与えてる可能性はないのかなと疑問に思った。

#6594_Itoh et al:
この論文では、人工的にウォーターチャネルを作っていた。チャネル内の構造はフッ素で覆われていて、これはテフロン加工から着想を得たしたらしい。アクアポリンに比べて100倍の効率で水を排出できるらしい。

寺田君 PNAS
Vol.119_#24, Lefteri at al:
蚊はいろいろな伝染病を媒介していることで知られているが、そもそも蚊自体が感染を促進させるような何かをだしているのではないかという問いに答えるための論文だった。セムリキ森林ウイルスと蚊の唾液を混ぜたものをマウスに投与すると、蚊の唾液がない場合に比べて感染確率が上がるということが分かった。蚊の唾液の成分の中でも、シアロキニンという血液凝固を阻害する成分だけでも感染確立が上がるということもわかり、主にこの成分が感染確立を上げているのではないかという結論だった。

Vol.119_#24, Americo at al:
今使われているコロナのワクチンはRNAワクチンだが、天然痘のワクチンにコロナウイルスのスパイクをくっつけて作った生ワクチンでも代替可能かもしれないということを示した論文だった、マウスにそのワクチンを投与して、どれくらい免疫反応が上昇するかということを見ていて、新しく作った生ワクチンでも免疫反応の上昇が引き起こされるということが分かった。

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