Science はおさん Vol.378 #6617, 6618, 6619
3冊から6報の紹介でした。

Joni NIkkanen et al.,
雄化させる転写因子BCL6を欠失させて肝臓を雌化させると、脂肪肝などの代謝性疾患になりにくくなる代わりに、免疫が低下するというトレードオフを示した論文でした。1つの形質を得ると別の形質が損なわれるトレードオフの仕組みは興味深いと感じました。

Yiyun Cao et al.,
炎症性腸疾患の患者の腸内細菌を調べたところ、DNA損傷を引き起こす遺伝毒性代謝物を産生する細菌が発見されたことを報告した論文でした。腸内細菌ががんを引き起こす可能性があることに非常に驚きました。

Yichen Qiu et al.,
特定の脳領域全体を標的としていた抗てんかん薬に対して、オンデマンドに特定のニューロンを標的とする治療法を提案した論文でした。てんかんを引き起こす過活動なニューロンに対して、初期に活性化されるプロモーターの制御下にカリウムチャネルをコードする遺伝子を置くと、ニューロンの興奮性が減少したことを報告していました。マウスの行動試験では異常が見られなかったようですが、ヒトではどうなるかが気になりました。

PNAS 和泉さん Vol.119 #31, 41
2冊から3報の紹介でした。

Robert Grgac et al.,
In vitroの実験からタンパク質の不可逆的変性と生体膜損傷をもたらすと考えられている凍結ストレスについて、凍結耐性を持つ個体と持たない個体を用いたin vivoの実験から、凍結ストレスの主な要因は膜損傷だということを示したという内容の論文でした。凍結保護分子を持たない個体が凍結されたとき、酵素は不活性化されない一方で、膜損傷が見られたという結果を報告していました。仮説とは異なり、凍結されても酵素は生体内で安定して存在するのが意外だと感じました。

Ibtissem Nabti et al.,
微小管結合タンパク質であるMAP4がリン酸化して微小管とカーゴをつなぎとめることで、キネシンのプラス端側へのオルガネラ輸送を阻害し、オルガネラの分布を調節することを報告した論文でした。細胞の機能維持に関わるオルガネラ輸送の制御は奥が深いと感じました。

Andrew K. Schulz et al.,
象の鼻が背側と腹側で非対称になっていて、背側の折りたたまれたひだの領域と腹側のしわの領域の組み合わせが柔軟性などをもたらすといった内容でした。動物を観察すると面白い知見が得られることがあると学びました。

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