滝口先生 Science Vol. 378 #6622, 6623
2冊から6報の紹介でした。
バクテリアががんに集まる習性を利用して、がんを排除するようなシグナルを直接がんに送り届けるという治療例の論文がありました。治療にバクテリアを使うということで安全性と心理的な抵抗をどう低減するかの問題があるとは思いますが、標的特異性と効能を向上させて実際の治療に適用できるようになるといいなと思いました。節足動物の脳の起源を化石から調べた論文は、化石の多重染色を行っていて、技術的にそんなことが可能なのかと驚きました。生物の進化は化石の形態学的な分類と比較的新しい分子系統学によって研究されてきましたが、それらを組み合わせることによって新たな知見が得られるとおもしろいなと思いました。

成田先生 Science Vol. 378 #6619, 6620, 6621
3冊から4報の紹介でした。
卵母細胞の減数分裂における紡錘体の形成機構についての論文がありました。卵母細胞は中心体をもたず、どのように紡錘体が形成されるのか明らかになっていませんでした。筆者らは、核膜崩壊前から存在する4つのタンパク質が微小管に囲まれたコンポーネントが、キネトコアに分配された後にそこから微小管が伸びて紡錘体形成が開始されることを発見しました。中心体から微小管が伸びてキネトコアに結合するという典型的な形成機構とは全く異なる機構になっていることにとても驚きました。

横澤くん Nature #7937, 7938
2冊から3報の紹介でした。
ショウジョウバエの匂い感知に関する論文がありました。僕たちは線虫の化学走性を用いて実験を行っているので興味深かったです。ハエは匂い自体の流れてくる方向と風向きの情報を統合して匂いの発生源へと向かうそうです。人間はそんなことができるのかあまり想像できませんが、他の生物種でもこうした感知を行っているのか気になりました。

福嶋さん PNAS Vol. 119 #43, 48, 49
3冊から3報の紹介でした。
バクテリアがコロニーを形成する様子を3次元で観察した論文は、ブロッコリー状の形に成長していくのがおもしろかったです。実験室では2次元のプレート上のコロニーしか目にすることはありませんが、3次元培養によって何か新たな発見ができるとおもしろいなと思いました。オーキシン様のはたらきをする物質を見つけたケミカルスクリーニングの論文は、オーキシン自体を不活化する酵素の阻害剤が発見されました。最も重要な植物ホルモンの1つであるオーキシンの代替になりうる物質の発見は、農業分野の研究に発展していくのかなと思いました。

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