片山さん
Nature 7939, 7940, 7941, 7942, 7943, 7944の6冊から6報の紹介がありました。どの内容も興味深く、なかでも電子線トモグラフィーにより、熱水孔に棲む古細菌の細胞内骨格のアクチン様フィラメントが見えた話が面白かったです。写真を見ると、細胞形態は枯草菌で報告されている細胞壁のないL-formに似ており、ぐにゃぐにゃしている中に1本だけフィラメントが見えていました。生物学的意義など知りたくなります。またグリーンランドの永久凍土に存在する200万年前の地層サンプルのメタゲノム解析を行い、地球温暖化がおこる前と後で生物種がどう違うのかを比較する研究も興味深いです。昨年のノーベル賞の効果もあるのでしょうか、こういった研究がこれからも進み、生態系の違いが見出されるのだろうと思われます。

和泉さん
Science 6607, 6627, 6628の3冊から3報の紹介がありました。マウスに感染したマダニがもつDome1という受容体がIFN gammaを受容することの発見は、マダニがマウス内で正常に成長するために必要なことを見出していて、ホスト個体の仕組みをうまく使っていて面白かったです。急速な羽ばたきをするハチドリの飛翔筋にはミトコンドリアが増えている話や、液相分離のしくみが精子形成の際にmRNAの貯蔵?(保持?)に働く話も興味深く拝聴しました。

菊本さん
PNAS vol.119#50, vol.120#2-3の3冊から3報の紹介でした。興味深かったのは3つ目の紹介論文で、antifreeze protein (AFP)の機能を1分子レベルで観察することで考察した研究です。QAEと呼ばれるタンパク質はコンパクトな1ドメイン構造のタンパクで、氷層の上にAFPを吸着させ、光学顕微鏡で全反射観察していました。色素を結合させ、ブラウン運動を検出していたり、これまでに見たことのない話で興味深かったです。普段バクテリアのフリーザーストックを作る際、DMSOやグリセロールを使いますが、凍結の際に細胞やタンパク質にダメージを及ぼさない仕組みをもう少し深く理解したいと思いました。

今年度はこれで全ての速報会日程を終了しました。参加者全員が秋学期は2回担当することで、論文のエッセンスを参加者に伝える訓練ができたかと思います。来学期に関してはまた相談します。

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