Nature 成田さん Vol. 616, #7956
1冊から3報の紹介がありました。

Joseph Kreitz et al.,
Extracellular contractile injection systems (eCISs) の話がおもしろかった。eCISs は細菌や古細菌が広く持つ巨大分子複合体で、格納された物質を他の細胞にインジェクションする機能を持っている。今回発表された論文では、eCISs に本来とは別のタンパク質を格納できたこと、ターゲットをヒト細胞に設定することに成功したこと、抗原抗体反応を利用して特定の細胞だけに格納タンパク質を注入できたことなどが報告されていた。これらの技術は、他の細胞へ特定の物質を注入することをより容易なものにしうると思う。格納できる物質には制限があるため酵素の注入などには効果が見込めないが、シグナル伝達物質を格納することでシグナルに介入できる可能性もあるとのことだった。思いつく活用方法が現実的かどうかはまだ判断ができないが、将来性のある技術だなと感じた。

Science 別所さん Vol. 379, #6638, 6639 and Vol. 380, #6640
3冊から4報の紹介がありました。

Li Zhou et al.,
生分解性プラスチックが抱える課題にアプローチしたという内容の話だった。現在の生分解性プラスチックは丈夫さなどの機械的な面や加工性において課題が残っているが、著者らによるとメチル化が課題改善の糸口になったらしい。化学に詳しくないので全てを理解できたわけではないが、官能基で性質がそこまで変わるのかと感心した。

Thomas M. Cullen et al.,
恐竜の顔がこれまで予想されていたものとは違っていたかもしれないという報告だった。従来の恐竜の復元図では口を閉じても牙が見える姿が描かれていたが、新しい予想によれば牙は口の中に収まっていたらしい。恐竜の頭部・牙の化石を現存している動物の頭部と比較した結果、より自然な頭部の形にたどり着いたとのことだった。 個人的には牙が見えていた方がかっこいいと思うので残念な気持ちもあるが、実際の姿により近い復元図を見られたのかもしれないと思うと少し興奮した。

PNAS 福嶋さん Vol. 119, #45 and Vol. 120 #8, 9
3冊から4報の紹介がありました。

Naomi Dirckx et al.,
生体内におけるクエン酸の分配に関する話だった。骨格には体内のクエン酸の80%以上が含まれていることが知られていたが、その分配の仕組みなどについてはわかっていなかった。著者らは骨芽細胞がクエン酸の取り込み・分配を制御していること、骨芽細胞でクエン酸の沈着に働く遺伝子が働いていることを明らかにした。骨芽細胞とクエン酸に深い関わりがあるということには驚いたが、生物の体の仕組みがいかに洗練されているかを実感できた。

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