Nature 横山さん #8039, 8040, 8042
3誌から3報の紹介がありました。

Michael P. Shahandeh et al.,
この記事では、慨日行動が神経ペプチド遺伝子の発現調節によって影響を受けること、慨日行動のPlasticity(柔軟性、可塑性?)が神経ペプチド遺伝子の調節変化によって進化してきたことが報告されていた。多くの生物は光周期の変化に慨日リズムを対応させることができるらしい(たとえば、D. sechelliaというハエは光が照射される時間に応じて活動のピーク時間を変化させることができる)。
筆者らはD. melanogasterを用いて概日行動に表現系が現れる変異体のスクリーニングを行い、種間特異的な時間的発現(慨日リズム?)を示す神経ペプチド色素分散因子(Pdf)を同定した。また、Pdfの発現調節が行動変化の柔軟性に影響することを示し、慨日可塑性進化に寄与したかもしれないという結論を出していた。 慨日行動が神経ペプチドによって制御されているということ自体にあまり驚きはなかった。おそらく自分の理解不足が原因だが、この論文でインパクトがある部分がよくわからなかった。あとで自分でも調べてみて、慨日行動の進化への関与を示唆できたことが重要なのかなと解釈した。

PNAS 瀧口さん Vol. 121, #33, 48, 49
3誌から10報の紹介がありました。

Paul R. Bierman et al.,
このBrief Reportでは、化石の研究からグリーンランドの気候について分析していた。筆者らによれば、グリーンランドの中央部でも更新世の一時期には氷のない時期が存在していたらしい。小さい頃は考古学者になりたかった身としては化石を主題に置いているだけでも面白いと思うのだが、その分析によって当時の気候まで解明することができるということに驚かされた。 また、瀧口先生は以前成田先生が紹介されていた地球温暖化の温度上昇幅の評価に関する論文にも触れていた。自分が得た知識を他のことと結びつけられるのはアカデミアで生き残ってきた人としての技能なのだと思う。とても参考になった。

Kasper Holst Hansen et al.,
この論文では黄色ブドウ球菌のBiofilm形成に関与するPSMタンパク質について触れていた。この論文の紹介で面白いと思ったのは、構造や単量体の違いでPSMが攻守ともに機能を持つことだった。β-fibril形成の結果生じるアミロイド繊維形成は細菌の保護に機能するが、α-helical構造をとる単量体は細胞毒性を示すらしい。一つのタンパク質にふたつの機能を持たせているという機能美に生物の凄さを感じた。

Matthew Watson et al.,
この論文ではいろんなものを混ぜて凝集形成を見るという実験を行っていた。おもしろいと思ったのは、LysとArgの違いが凝集において違いを生じるらしいということだった。この2アミノ酸はphase separationにおいては劇的な違いを生むが、他のことについてはそこまで大きな違いは生まないらしい。あまり詳しくないが、同じ塩基性残基でありながら大きな違いを生じることができるというのはおもしろいなと思った。

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