平子さん
Nature 8041, 8045から5報の紹介がありました。
どれも興味深いです(いつも平子さんの発表は上手で面白さがわかりやすい)が、個人的に一番刺さったのは、#8045のPourmal et alのNINJ1の話でした。NINJ1は複数分子集まって膜に穴を開けるのですが、モノマーがリング状に並ぶ際に、N末のヘリックスが横向きに並ぶというのが面白いです。最近べん毛固定子のAサブユニットも膜と細胞質の界面を取り囲むように横向きヘリックスがあり、箍のように働くという論文を出したことがありますが、それに近いようにも思えます。べん毛の回転子リングは、隣り合う分子が重なり合うようにつながっているので、案外生き物は同じようなリング形成の仕組みを持つのだなと思いました。
菊本さん
Nature 8043, 8044から3報の紹介がありました。
菊本さんの今回のハイライトは力を感知する半導体センサーの話でした(#8044, Fardian-Melamed et al, Casar et al)。1報目ではNaYF4 doped Tm3+の結晶を使っていて、0.5nN~8000nNのレンジで力を検出できるようです。最近流行りだした、赤外光を当てて可視光を出す仕組みを用いていて、規格化した発光強度と力の大きさがlinearな関係になっているようです。似た仕組みを別グループが開発していて、そちらではポリスチレンビーズにこの半導体を埋め込み、大腸菌と同じ大きさにして、線虫に食べさせていました(間違えて飲み込むのだろうと思います)。飲み込む際にどの筋肉がどのくらいの力を出すのかを見ていて、筋肉で発生する力を電気生理で得られた指標と比較し、こちらもリニアになっていることを示していて、応用できそうな気がします。口の部分から飲み込む咽頭部分で一番力がかかるようです(私の生理・解剖学の講義でもペリスタポンプのように食道の部分は同じ力がかると教えています)。飲み込んだ大腸菌を筋肉で潰しながら栄養源にするらしいのですが、このパーティクルは栄養にできないため、そのまま体内から排出されるのだろうと思います。排出の際に筋肉で発生する力も測っているのかもしれないですね。