教授
廣明 秀一
廣明グループ(創薬科学研究科構造分子薬理学分野)は、SBDD、FBDD、NMR構造決定、次世代人工核酸を利用した創薬などを行う、薬学よりの構造生物学研究を推進するユニットです。
客員教授
甲斐荘 正恒
立体整列同位体標識法 (Stereo-Array Isotope Labeling method : SAIL法)を用いて、次世代の蛋白質構造解析技術、及び蛋白質の動態解析技術を開発し 構造と生体機能との相関を解明することを目指しています。
特任教授
前田 雄一郎
アクチンは全ての真核生物の全ての細胞に存在し、とてつもなく多くの重要な役割を果たしています。
アクチンは細胞の中で繊維状構造(アクチンフィラメント)を作り、その配置が細胞の形を決め、その変化が細胞を動かします。他の細胞との接着、細胞外基質との接着、細胞の分裂、物質の輸送においてもアクチンが主要な役割を果たしており、神経回路形成、癌細胞浸潤、動植物の生殖、細胞分化、筋収縮など様々な観点から盛んに研究されています。それらの現象の中で、アクチンフィラメントはあるときは細胞の骨組みとなり、あるときはモーター蛋白質であるミオシンが走る道となり、またあるときはそれ自体モーターとして働き、またあるときには張力センサーとして働きます。アクチンフィラメントの役割はまだ全貌が明らかになっておらず、日々新しい機能や役割が発見され続けています。
これらすべてに共通して、アクチンフィラメントは重合、脱重合を通じて常に形成と消滅を繰り返していて、この動態のおかげで内的、外的環境に応じたアクチンフィラメントネットワークを動的に形成することができます。このことが、たった一種類の蛋白質がこれほど多くの機能を持つことを可能にしています。アクチンフィラメント動態を理解することは、ヒトも含めた真核生物において起こる非常に広い範囲の現象の理解に必要不可欠です。
私たちは、このアクチンフィラメントの動態とその制御機構を、残基の側鎖レベル、蛋白質構造レベル、細胞レベルの各階層の研究を通じて総合的な理解を深めることを目的としています。
准教授
松浦 能行
私たちはこれまでに、細胞内輸送の分子機構など、生命機能の基本メカニズムを構造生物学的に解明してきました。これまでに取り組んできた細胞生物学と構造生物学の学際的基礎研究の経験に基づき、現在はヒトのさまざまな疾患(がんなど)の分子病態の解明および創薬への展開を目指したプロジェクトに研究が発展しています。現在進行中のプロジェクトは以下の3つです。 1)がんの発症と悪性化の分子機構の研究。発がんシグナル伝達経路の鍵分子の構造解析など、難治がん治療戦略に新展開をもたらす創薬を指向した構造生物学研究に取り組んでいます。 2)免疫系の疾患に関わるシグナル伝達・遺伝子発現制御機構の研究。免疫系疾患の対症療法ではなく、根本的治療を可能にする創薬を指向した構造生物学研究に取り組んでいます。 3)神経系の疾患に関わるミトコンドリア動態制御機構の研究。神経変性疾患や神経発達障害の原因因子の作用機序を解明するための構造生物学研究に取り組んでいます。
教授
渡邉 信久
私たちの研究グループでは,結晶構造解析法と小角散乱法というX線の回折を用いた構造解析法を駆使して,さまざまな蛋白質の構造と機能の関係の解明と,それを活かした応用研究を目指しています.応用研究だけでなく,あいちシンクロトロン光センターに設置している名古屋大学ビームラインBL2S1の整備運用や1GPa(1万気圧)の高圧環境で回折測定できる実験装置の開発など,蛋白質の構造研究を推進するための新しい方法論的な開発にも力を入れています.
教授
本間 道夫
細胞を包む膜には生命維持に最も重要な超分子構造体である感覚レセプターやエネルギー変換蛋白質が埋め込まれ、機能している。私達のグループはバクテリアのもつ運動器官であるべん毛を主な研究対象として、その超分子複合体のエネルギー変換機構、局在化機構、構築機構、および環境に対する細胞応答について研究を行っている。細菌べん毛は、膜に埋め込まれたミクロ回転モーター(蛋白質の集合体)によって駆動されている。このモーターは,膜を隔てたイオンの電気化学的ポテンシャルを回転という機械的なエネルギーに変換する新しいタイプの分子機械(超分子ナノマシン)である。イオンの流れがどの様にして回転力に変換されるか、エネルギー変換ユニットの構造はどの様なものかなどを、遺伝子工学、生化学、生物物理学の手法を用いて解析している。また、海洋性ビブリオ菌では、べん毛は極に1本だけ形成される。どのようにして、超分子べん毛が位置と本数を厳密に制御して形成されるのか、そのメカニズムも調べている。さらに、べん毛は運動器官であると同時に、タイプIII型に分類される細菌病原因子と類似の輸送装置でもある。そのユニークな蛋白質輸送機構についても研究している。具体的には、1)タンパク質を精製して結晶構造解析、NMRによる動的構造解析、分光解析、熱解析などの物理化学的解析、2)超分子複合体のべん毛構造の電子顕微鏡観察、3)蛍光タンパク質を融合した一分子モーター観察、4)イオン流の測定やべん毛の高分解能回転計測などの結果から、べん毛の回転機構と制御機構を解明、5)べん毛のモーター部分を試験管内に再構成して、構成する輸送蛋白質の機能の解明やエネルギー変換機構の解明する。以上のように、膜蛋白質をキーワードに,生体膜の機能を分子レベルで理解することにより,生命現象を深く追求しようとしている。
准教授
成田 哲博
アクチンフィラメントは、細胞内で無数の重要な役割を果たしますが、その構造解析には、X線結晶解析やNMR法が使えません。 また、その直径は細く、ゆらぎも大きいため、電子顕微鏡法を用いても困難を伴います。そのため、アクチンフィラメントそのものやその制御メカニズムについては分かっていないことばかりです。 私たちは、電子顕微鏡と光学顕微鏡を通して、アクチンフィラメントのような繊維状タンパク質の動態と機能、および、制御タンパク質による制御メカニズムを探っています。
教授
木下 専
脳・神経系では膨大な数のニューロンとグリアが複雑な回路を構成し、多面的な機能を発現しています。グリアを含めたシナプス近傍の微細構造、グルタミン酸やドーパミンなど神経伝達物質受容体・輸送体の分布や密度はヒトを含めた動物の行動や精神活動を左右する量的指標として有用です。これらの情報をナノメートル精度で取得できるイメージング手法は電子顕微鏡法に限られるため、当グループでは連続切片画像3次元再構築(ssTEM)法や免疫標識法などと組み合わせた定量解析を行っています。
教授
岡本 祐幸
生体分子系などの多自由度複雑系ではエネルギー極小状態が無数に存在するので、計算機シミュレーションがこれらの極小状態に留まってしまうという困難があった。我々はこの困難を克服するために、拡張アンサンブル法と総称されるシミュレーション法を生体分子系に導入するとともに、より有効な拡張アンサンブル法を新規に開発してきた。これによって、様々な生体分子系の計算機シミュレーションを行っている。具体的には、蛋白質の折り畳み問題、高圧力下の構造転移、小分子の蛋白質への結合、アミロイド線維形成等について研究している。更には、蛋白質以外に、核酸、脂質二重膜、オリゴ糖分子等のシミュレーションも行なっている。