五島研究室
名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻細胞内ダイナミクスグループ
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研究テーマ
 私たちは、細胞内動態、とりわけ微小管が関与する動態に興味を持っています。これまで多様な生物種、研究手法を用いてきました。現在は、ヒト培養細胞、ヒメツリガネゴケ、分裂酵母を用い、細胞生物学、遺伝学、生化学を組み合わせた研究を展開するとともに、臨海実験所にも研究室を開設して新たにマリンバイオロジーを始めました。生物種が変わればメカニズムが異なることは多々あり、生物ごとの独自性と共通性を明らかにすることを目標としています。
(1)名古屋大学東山キャンパス
 動物細胞生物学:スピンドル形成の分子モデル構築
 私たちはスピンドル形成機構の解明に向けて精力的に研究を推進してきました。たとえば、ショウジョウバエ培養細胞に対して行った全ゲノムRNAiスクリーニングにより200を超えるスピンドル形成因子を同定、さらに、逐一他の因子との局在依存性を調べ、スピンドルをタンパク質の集合体として描写することに成功しました。その後、私たちが発見・命名した「オーグミン複合体」による微小管生成の仕組みや生み出された微小管がどうオーガナイズされるかを中心に研究を展開し、中心体に依存しないこの新機構がスピンドル形成に重要であることを証明しました。また、動的な細胞骨格を主体としながら長時間一定の構造を保つスピンドルをシステムとして捉え、この挙動を説明する数理モデルも提唱しました。現在は、オーグミンや微小管生成の研究から視野を広げ、スピンドル総体の分子モデル構築を目指しています。

参考文献:Goshima et al. Science. 2007; Goshima et al. J Cell Biol. 2008; Uehara et al. PNAS.2009; Uehara and Goshima. J Cell Biol. 2010; Goshima. PLoS One. 2011; Kamasaki et al. J Cell Biol. 2013; Uehara et al. J Cell Biol. 2013; Ito and Goshima. J Cell Biol. 2015; Watanabe et al. Cell Rep. 2016; Tungadi, Ito et al. J. Cell Sci. 2017; Edzuka and Goshima. J Cell Biol. 2019.

(図1)スピンドル動態

 植物細胞生物学:ヒメツリガネゴケを用いた研究
 植物の細胞分裂や微小管動態の調節機構は、動物や酵母のものに比べて解明が進んでいるとは言えません。この状況を挽回すべく、ヒメツリガネゴケを用いた植物細胞生物学も展開しています。ヒメツリガネゴケはDNA相同組換えの効率が非常に高く逆遺伝学に適しているため、近年注目されている有力なモデル陸上植物です。私たちはこれまでに、ヒメツリガネゴケにおいて誘導型RNAiシステム、斜光照明蛍光顕微鏡法の開発やCRISPR/Cas9遺伝子編集法の改良に成功し、微小管制御因子の細胞生物学的解析を進めてきました。これからも逆遺伝学手法を網羅的に用いて発生・細胞生物学を展開していきたいと思っています(特に植物幹細胞の分裂や運命決定に着目します)。 ヒメツリガネゴケ
(図2)モデル植物・ヒメツリガネゴケ
参考文献:Nakaoka, Miki et al. Plant Cell. 2012; Kosetsu et al. Plant Cell. 2013; Miki et al. PNAS. 2014; Nakaoka et al. Plant Cell. 2015; Miki et al. Plant Cell Physiol. 2015; Jonsson et al. Nat Plants. 2015; Naito and Goshima. Cell Struct Funct. 2015; Yamada and Goshima. Biology. 2016; Yamada et al. J Cell Biol. 2017; Kosetsu et al. PNAS. 2017; Leong et al. Cell Struct Funct. 2018; Yamada and Goshima. Plant Cell. 2018; Yi and Goshima. Curr Opin Plant Biol. 2018; Kozgunova et al. elife. 2019; Yoshida et al. Cell Struct Funct. 2019; Kozgunova and Goshima. Sci Rep. 2019; Yi and Goshima. Plant Biotechnol J. 2020; Yi and Goshima. Curr Biol. 2020; Kozgunova et al. bioRxiv. 2020.

(動画2)ヒメツリガネゴケ幹細胞の分裂の様子
緑:GFP-tubulin / 赤:Histone-RFP
 酵母を用いた「進化実験」
 各生物種には、構成する細胞の増殖や生存に必要不可欠な遺伝子(必須遺伝子)が数多く存在します。たとえば単細胞生物の酵母では、約5,000の全遺伝子のうちの20%が生育に必須の遺伝子です。ところが、近年の様々な生物種のDNA解析の結果、ある生物種では生育に必須の遺伝子が、別の生物種では進化の過程で失われるという例が数多く認められました。これは、生物種によっては、必要不可欠と思われていた遺伝子がなくとも増殖可能であることを意味しており、増殖を可能にする未発見の仕組みが存在することを示唆しています。逆に言うと、ヒトを含めた多くの生物種において、多くの細胞活動に対して、主要機構の他に代替として使われうる機構が潜在していると考えられます。主に必須遺伝子に着目してきた私たちはまだ細胞に備わる機構の全貌を明らかにできていないことが推測されます。そこで、分裂酵母を材料に、必須遺伝子を完全に失った細胞の増殖能力を実験的に回復させることを試みています。これまでに、約90の必須遺伝子のうち20%程度について、欠失後も酵母の増殖能力を維持することに成功しました。その要因を分子レベルで突き止めることで、必須遺伝子のロスを代替するサブ機構を明らかにすることができるものと期待しています。

参考文献:Takeda et al. Cell Struct Funct.2019.

(図3)分裂酵母を用いた「遺伝子必須性のバイパス」研究
(2)菅島臨海実験所
 名古屋大学・菅島臨海実験所(NU-MBL)は2020年4月より新体制に移行しました。現在は五島が所長として小規模の研究グループを形成し海藻を用いた研究を開始したばかりですが、今後、複数の独立グループよりなる強固な研究体制を構築し、分子から生態、行動、進化まで、海洋生物学研究に様々な角度から精力的に取り組むことを目指しています。

 鳥羽は海苔をはじめとして色々な海藻の産地です。五島グループは海藻における細胞内動態の研究を開始しました。海には多様な生物種が生息し、その中には細胞レベルで陸上生物とは大きく異なる特徴を有するものも多くいます。たとえば細胞分裂はすべての生物にとって基盤的な活動ですが、このプロセスにおいてですら海藻では「常識外れ」の様式が存在することが示唆されています。これらを理解する上で、陸上生物のモデル細胞種を用いた研究で得られた知見をそのまま当てはめることはできないはずです。また、実際の海藻細胞内での動態や、あるいは独自の様式を司る遺伝子(タンパク質)についての知見は多くありません。細胞骨格、染色体の動態観察や必要遺伝子の同定を通じて海藻の一見独自の細胞分裂の仕組みを明らかにすることを当面の目標としています。

(図4)菅島臨海実験所前で採集した海藻

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